東京とんかつ会議 第46回 成城学園前「椿」の「椿(ロースカツ)1800円

とんかつ会議 ,

東京とんかつ会議 第46回
成城学園前「椿」の「椿(ロースカツ)1800円 ご飯200円(小)豆腐の味噌汁300円
<肉2、衣2、油3、キャベツ2、ソース2、御飯2、新香2、味噌汁3、特記1【おしんこ500円】 計19点

「椿」に初めて出かけたのは、今から31年前の1983年だった。高級住宅街の中の一軒家というのも珍しければ、とんかつ屋に駐車場があるという点にも驚いた記憶がある。当時とんかつ定食の価格は、一部の店を除いて1000円から1400円位だったが、この店は2000円近くした。場所柄とその高級感もあって、お客さんは皆上品な紳士やご婦人で、都心のサラリーマン主体の店とは、明らかに違っていた。
時代が移り、椿のロースカツを定食にして頼もうと思えば、2300円。とんかつ会議を毎回読んでいただけている方は、よくわかると思うが、今まで登場したとんかつ屋の平均的な価格である。
とんかつを頼めば、老主人がカツを揚げはじめる。低温から温度を上げていくのだろう。カウンター越しに鍋にカツを入れた気配があるが、音がしない。5分ほどすると音が立ち始め、10分ほどで揚げあがる。。
ラードの香ばしさをふりまきながら運ばれるカツの、衣は粗く、噛むとサクッと軽快な音を立てる。肉はきめ細かく、香る豚肉で、脂の消え具合もいいが、昨今の同価格帯の他店が使うブランド豚の実力と比べると、やや劣る。この肉なら衣も、より細かくした方が肉が生きると思う。油切れはよく、ラードの香りやコクは十分。
赤だし味噌汁は香り高く、ご飯、お新香(キャベツと胡瓜の浅漬け)の質をもう少しあげれば、この地にふさわしい、上質の和定食になるはずである。
ソースは一種類。濃く甘みが強いゆえ、とんかつには少量づつかけるのがいいだろう。ちなみにキャベツにこのソースは合わない。
別注文のお新香は、キュウリ、大根、蕪、茄子の糠漬けで、真っ当なうまさがある。キャベツの浅漬けの代わりにこれを、少量添えてくれるだけで、ずいぶん印象が変わると思うがどうだろう。
ちなみに余談ながら、こうした衣の荒いカツで、さらにラードで油切れがいい場合、剥がれた衣を集め、ご飯にかけて塩もかけ、天バラ風「衣バラ」にして掻き込むと、別趣のうまさが生まれる。ご興味ある方は、この店でぜひ。